満ち足りる心

◆ローマ人への手紙:12章3節

わたしに与えられた恵みによって、あなたがた一人一人に言います。自分を過大に評価してはなりません。むしろ、神が各自に分け与えてくださった信仰の度合いに応じて慎み深く評価すべきです。

◆テモテ第一の手紙:6章6節~8節

しかし、満ち足りる心を伴う敬虔こそ、大きな利益を受ける道です。
私たちは何一つこの世に持って来なかったし、また何一つ持って出ることもできません。
衣食があれば、それで満足すべきです。

◎三つの腕時計

ホープ・チャペルの創設者、ラルフ・モア牧師のシンプル(スモール)・チャーチのムーブメントを通して、世界に2200以上の教会が生み出されています。ミニストリーで成功を収め70才を超えたラルフ・モア牧師ですが、謙虚な彼は今までのつつましくシンプルな生活スタイルを変えません。そのモア牧師が最近のメッセージの中でご自身の教会観を語っていますが、それを皆さんにもお分かちしたいと思います。

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モア牧師が南米を旅していた時のこと、国境付近で腕時計を売っている行商人に出くわします。ちょうど、その前日に腕時計が壊れて困っていたところでしたので、彼は、その行商人からロレックスの時計を買うことにしました。もちろん、見かけはロレックスですが、偽物です。10ドルを出して、本物そっくりのロレックスを手に入れました。

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旅行から帰ってきて、用済みとなった10ドルのロレックスを引き出しに投げ込むと、少しお金を出して、中古でしたが少し高級な時計を買ったそうです。ところが、しばらくすると困ったことがおきました。暗いところでも見やすいように大きな文字盤の針が光る腕時計だったのですが、(老眼が進んだせいで?)見にくくなってしまったのです。

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数年前に旅行で買ったあのロレックスのことを思い出して引き出しを開けてみると塗装が色あせて見る影もなくなっていました。偽物を偽物に過ぎなかったのです。でも、もともと10ドルでしたし、旅行のあいだは助かったので文句は言いませんでした。新しい腕時計を買う必要に迫られましたが、あちこち買い物に行く時間がありません。ところがたまたま若い友人の一人がカッコイイLEDの時計をしているのを見つけました。数字も大きく読みやすいですし、ボタンを押すとライトで文字が浮かびあがります。きっと高価な時計に違いないと思ったモア牧師ですが、その若い友人に腕時計の値段とそれをどこで購入したのかを尋ねました。うれしいことに、近くのショッピングモールで、20ドルで購入したと言うのです。モア牧師がショッピングモールに駆け付けると、同じ腕時計が値下げになって10ドルで売られていました。

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この10ドルの腕時計はモア牧師の必要にすべて答えてくれたのです。一方、高価ではあっても役に立たなくなった腕時計は、かつて偽物ロレックスがしまってあった同じ引き出しに眠っています。モア牧師はここから改めて教会が考えるべき三つの教訓を学んだそうです。

Ⅰ.偽物はやっぱり偽物

モア牧師が最初に買った腕時計は偽物のロレックスでした。旅の間は役立ちましたが、しばらくすると使いものにならなくなってしまいました。望んでいるものが手に入らないと私たちは手ごろな偽物を手にしてしまうことがあります。でも、偽物は偽物にすぎません。他の教会の成功を真似しても決してうまくいかないということです。私も大教会(主にアメリカ)の牧師先生方の書かれた本をいろいろと読んだりしましたが、少しは参考になるところはあっても、自分たちの教会に適応していくことには難しさを覚えました。教会が置かれている文化も、状況も違うからです。ささやかであっても自分たちにとって本物、オリジナリティーがあればよいのです。

モア牧師が最初に開拓したカリフォルニアの教会は、独身の青年たち(大人)がたくさん集まってきたそうです。北にはジャック・ヘイフォード牧師のチャーチ・オン・ザ・ウェイ、南にはチャック・スミス牧師のカルバリー・チャペル、ホープ・チャペルはその間に位置していました。モア牧師は、ホープ・チャペルがあまり家族向きの教会ではないことを理解していましたので、他の教会の真似をせずに、独身の青年たちにできる限り力を注いで伝道し、それが実を結んでいったと証ししています。

Ⅱ.高価でも必要を満たさなければ役に立たない

モア牧師が二つ目に買った腕時計は、彼にとってはそれなり高価で見栄えの良い腕時計で、しばらくは役に立っていましたが、彼の必要を満たせなくなった時点で不要の長物となってしまいました。教会は、またクリスチャンは「自分たちにとって何が本当に必要であるか」求める前によく吟味する必要があると思います。私たちにとって必要なものは、高価(高性能)だけどたまにしか使わないものではなく、毎日、長く使えて役に立つものでなければなりません。モア牧師は、メッセージ中で持てるものをフル活用することの大切さを良く語っています。モア牧師がカリフォルニアで開拓した最初の教会は中古の建物を少しずつ拡張しながら使っていました。その後数千人の大きな教会を建て上げたあとに、ハワイに移住し、そこでまたゼロから開拓をスタートしました。当初はわずかな人数を集めてビーチで礼拝を続けていた時期があったそうです。カネオヘにハワイ最初のホープ・チャペルが建て上げられて、上に書いたシンプル・チャーチのムーブメントが始まります。

Ⅲ.身の丈にあったものがベスト

モア牧師が三つ目に買った腕時計は、10ドルで安売りされていた時計でしたが三つの買い物の中で一番満足できるものでした。モア牧師の要求に期待以上に答えてくれたからです。ロレックスのような最高級に見える教会もあるでしょうし、そこそこ高級に見える教会もあるでしょう。でも世界を見渡した時には、日本もそうですが、質素な教会が圧倒的に多いのではないでしょうか。問題はどう見えるかではなく、実際の役に立つかどうか、神様と人々の必要を満たせるかどうかにあると思うのです。私たちの教会、グレイスハウスにも個性があり、文化があります。特徴をあげるならば庶民的で家族的な教会、地域に根差した教会だと言えるでしょう。なにか他のものを真似するのではなく、与えられているものを最大限に用いて、それを感謝して受け取り、隠れた賜物を発掘して用い、キリストにあって自分たちらしくあることが成長していくための一番良い方法だと思うのですが、皆さんはどう思いますか?